これは何か
解決策ありきの Issue ではなく、問題定義から始める検討 Issue。 「そもそも現状の _compute_confidence() の何が不足なのか」「laarma の confidence は業界のどの枠組みに対応するのか」を整理し、見直しの土台を作る。具体的な計算式の変更は本 Issue では決めない。
背景: 仕様での confidence の位置づけ
AARM 仕様で confidence_level は δ シグナルの一つで、「システムが現在のアクションを評価する確信度、allow/deny/defer 決定に用いる」と定義される(§IV-C)。用途は2つ:
- context-dependent allow: 「confidence level が、直接 allow するか人間確認(STEP_UP)を求めるかを決める」(§IV-B3)
- context-dependent defer: 「allow/deny には confidence が不十分」なときの保留トリガー。R3 は「confidence score (if implemented) が deployment 設定の閾値を下回ると DEFER を MUST トリガー」とする(§VII R3)
仕様は (if implemented) と明記しており、計算方法は実装依存で規定しない。
重要な前提(risk-classification.md で確定済み): confidence は「(a, C) を評価できる度合い(evaluability)」であって、アクションの危険度ではない。 危険度は data_classification と IntentAlignment が担う。confidence は「判断材料が足りているか/判断しきれるか」を表す。
現状の実装
context_accumulator.py の _compute_confidence() は、1.0 を起点にしたヒューリスティックな加減算:
score = 1.0
score -= semantic_distance * 0.3 # 意味的距離が大きいほど評価困難
if scope_expansion: score -= 0.25 # 想定外スコープは評価困難
if action_matches_intent: score += 0.1 # 明示的一致は評価しやすい
return clamp(score, 0.0, 1.0)
係数(0.3 / 0.25 / 0.1)は経験的に置かれた値で、根拠の裏取りや較正(calibration)はされていない。方向性(距離が大きい・スコープ外なら評価しにくい=低 confidence)は evaluability の考え方と整合しているが、値そのものは恣意的。
業界実践の調査メモ(裏取り済み、参考)
laarma を縛るものではなく、見直しの参照。web 調査に基づく。
最重要の気づき: laarma の confidence は2系統あるうちの「selective prediction」側。 LLM の confidence 研究は大きく2系統に分かれる:
- Calibration / uncertainty quantification(答えの正しさ) — token logits、verbalized confidence、self-consistency、ECE 最小化など。「モデルの回答がどれだけ当たるか」を測る。→ laarma の confidence とは別物。
- Selective prediction / learning to abstain(留保すべきか) — 確信が閾値を下回るとモデルが予測を留保(reject / abstain)し、人間・上位モデル・追加データ収集に委ねる(reject option、Chow 2003 / Geifman & El-Yaniv 2017)。→ laarma の DEFER / STEP_UP と構造的に同一。
laarma の confidence_level(evaluability)と DEFER は、明確に 2 の系統。これを取り違えて 1 の手法(verbalized confidence 等)を持ち込むと、「危険度でない・evaluability である」という確定済みの前提から外れる。
その上で、2 の系統で laarma に効きそうな観点:
- evidential sufficiency(証拠の十分性)で留保を決める定式化が、laarma の evaluability に最も近い。「関連文書の平均関連スコアが閾値を下回る/最小確信度を満たす証拠が無ければ留保する」という、証拠の十分性と留保意志を明示的に結ぶ考え方(techrxiv 2508.07556 系の abstention 論)。laarma の「user_intent との一致・スコープ・ドリフトという証拠が十分か」と同じ方向。
- 実装の定石は confidence-threshold abstention — calibration 後に閾値で留保する古典的 reject-option ルール(Geifman & El-Yaniv 2017、Chow 2003)。AARM R3 の「閾値を下回ると DEFER」と同型。
- 評価軸は risk-coverage tradeoff — 閾値を上げるほど coverage(自律処理する割合)は下がるが、受理したものの誤り率は下がるべき。閾値は「滑らかで単調な risk-coverage 曲線」を生むのが望ましい(arXiv:2601.00138)。→ laarma の閾値設定・チューニングの評価に使える観点。
- 落とし穴: verbalized confidence は判断と乖離する — モデルに「どれくらい確信があるか」を自己申告させる方式は、実際の正しさや行動と合わない(「不確実と言いながら不可逆な行動を取る」)。複数の資料が一貫して指摘(zylos.ai 2026-04、arXiv:2601.07767)。→ confidence を LLM 自己申告に頼る方向は避けるべき、という示唆。現状の laarma がヒューリスティック計算(自己申告でない)なのはこの点ではむしろ妥当。
この調査と AARM 論文の参照文献との関係
上記の selective prediction / abstention / calibration 系の文献は、AARM 論文(arXiv:2602.09433)の参照リスト(全37件)には直接は含まれない。論文の参照はエージェントセキュリティ(脅威・攻撃・防御)、アクセス制御、HITL、業界フレームワークに寄っており、confidence/uncertainty の計算手法そのものを扱う文献は無い。これは論文が confidence の計算方法を (if implemented) として意図的に未規定にしているため、当然の帰結。本 Issue の調査は、その「仕様が空けた箇所」を埋めるために外部の隣接領域から持ち込んだもの。
ただし論文の文献体系から辿れる隣接関係はある:
- 論文 [3] NIST AI RMF 1.0 — MEASURE 機能で AI システムの不確実性の測定・文書化を求めており、uncertainty quantification はこの系譜に連なる。
- 論文 [29] H. Su et al. "A Survey on Autonomy-Induced Security Risks"(arXiv:2506.23844) — 論文本文の Related Work(§II-A)が「deferred decision hazards(保留された決定の危険)」を扱う文献として言及。DEFER の安全性に踏み込んでおり、selective prediction / abstention とテーマが地続き。
- 論文 [9] AgentDojo / [17] ToolEmu — リスクのあるエージェント挙動の評価ベンチマーク。selective prediction の評価軸(risk-coverage tradeoff)と発想が近い。
つまり本調査は「論文と無関係に外から持ってきた」のではなく、「論文が未規定とした confidence 計算を、論文の隣接文献(特に NIST AI RMF [3]・Su survey [29])と地続きの研究で補完した」もの。検討本番で深掘りする際は、まず [29] の deferred decision hazards から辿るのが筋が良い。
laarma にとっての論点(要検討、結論なし)
- そもそも現状の何が問題か。 試作段階として、ヒューリスティックな加減算で DEFER のデモは動いている。「係数に根拠がない」ことが実害を生んでいるのか、それとも将来の精緻化に向けた地ならしなのかを、まず切り分ける。
- confidence を evaluability として捉える laarma の方針を、selective prediction / evidential sufficiency の語彙でどう正確に表現するか。risk-classification.md の「危険度でない」という確定事項との整合。
- 現状の3入力(semantic_distance / scope_expansion / action_matches_intent)は「証拠の十分性」の代理として妥当か。足りない証拠軸はないか(例: data_classification の不確かさ、action history の薄さ = 仕様が defer 条件に挙げる「prior actions が workflow を確立していない」)。
- 係数・閾値を「恣意的な値」から「risk-coverage で較正できる値」へ動かす余地があるか。ただし試作段階で較正用データセットを持つコストに見合うか。
- verbalized confidence(LLM 自己申告)には寄せない、という現状方針を明示的に確認する。
進め方
解決策(新しい計算式)に飛びつかない。まず「現状の何が問題か/何が十分か」を切り分け、laarma の confidence を selective prediction / evidential sufficiency の枠組みで言語化する。そのうえで、見直すなら証拠軸の追加・閾値較正の順で検討する。方針が固まれば設計メモ化を検討(confidence の位置づけは risk-classification.md に既に一部あるため、そこへの追記か別メモかも論点)。
関連
laarma_sdk/src/laarma/context_accumulator.py の _compute_confidence() / derived_signals()
- docs/design/risk-classification.md(confidence は危険度でない・evaluability である、の確定)
- 仕様 §IV-B3(context-dependent allow の confidence)/ §IV-C(δ の confidence_level)/ §VII R3(閾値を下回ると DEFER、
if implemented)
- AARM 論文の隣接文献: [3] NIST AI RMF 1.0、[29] Su et al. autonomy-induced risks survey(deferred decision hazards)、[9] AgentDojo / [17] ToolEmu(評価)
- 外部参考文献(論文の参照外・補完): selective prediction / reject option(Chow 2003, Geifman & El-Yaniv 2017)、abstention と evidential sufficiency(techrxiv 175682660)、risk-coverage(arXiv:2601.00138)、verbalized confidence の乖離(arXiv:2601.07767)
これは何か
解決策ありきの Issue ではなく、問題定義から始める検討 Issue。 「そもそも現状の
_compute_confidence()の何が不足なのか」「laarma の confidence は業界のどの枠組みに対応するのか」を整理し、見直しの土台を作る。具体的な計算式の変更は本 Issue では決めない。背景: 仕様での confidence の位置づけ
AARM 仕様で
confidence_levelは δ シグナルの一つで、「システムが現在のアクションを評価する確信度、allow/deny/defer 決定に用いる」と定義される(§IV-C)。用途は2つ:仕様は
(if implemented)と明記しており、計算方法は実装依存で規定しない。重要な前提(risk-classification.md で確定済み): confidence は「(a, C) を評価できる度合い(evaluability)」であって、アクションの危険度ではない。 危険度は data_classification と IntentAlignment が担う。confidence は「判断材料が足りているか/判断しきれるか」を表す。
現状の実装
context_accumulator.pyの_compute_confidence()は、1.0 を起点にしたヒューリスティックな加減算:係数(0.3 / 0.25 / 0.1)は経験的に置かれた値で、根拠の裏取りや較正(calibration)はされていない。方向性(距離が大きい・スコープ外なら評価しにくい=低 confidence)は evaluability の考え方と整合しているが、値そのものは恣意的。
業界実践の調査メモ(裏取り済み、参考)
最重要の気づき: laarma の confidence は2系統あるうちの「selective prediction」側。 LLM の confidence 研究は大きく2系統に分かれる:
laarma の
confidence_level(evaluability)と DEFER は、明確に 2 の系統。これを取り違えて 1 の手法(verbalized confidence 等)を持ち込むと、「危険度でない・evaluability である」という確定済みの前提から外れる。その上で、2 の系統で laarma に効きそうな観点:
この調査と AARM 論文の参照文献との関係
上記の selective prediction / abstention / calibration 系の文献は、AARM 論文(arXiv:2602.09433)の参照リスト(全37件)には直接は含まれない。論文の参照はエージェントセキュリティ(脅威・攻撃・防御)、アクセス制御、HITL、業界フレームワークに寄っており、confidence/uncertainty の計算手法そのものを扱う文献は無い。これは論文が confidence の計算方法を
(if implemented)として意図的に未規定にしているため、当然の帰結。本 Issue の調査は、その「仕様が空けた箇所」を埋めるために外部の隣接領域から持ち込んだもの。ただし論文の文献体系から辿れる隣接関係はある:
つまり本調査は「論文と無関係に外から持ってきた」のではなく、「論文が未規定とした confidence 計算を、論文の隣接文献(特に NIST AI RMF [3]・Su survey [29])と地続きの研究で補完した」もの。検討本番で深掘りする際は、まず [29] の deferred decision hazards から辿るのが筋が良い。
laarma にとっての論点(要検討、結論なし)
進め方
解決策(新しい計算式)に飛びつかない。まず「現状の何が問題か/何が十分か」を切り分け、laarma の confidence を selective prediction / evidential sufficiency の枠組みで言語化する。そのうえで、見直すなら証拠軸の追加・閾値較正の順で検討する。方針が固まれば設計メモ化を検討(confidence の位置づけは risk-classification.md に既に一部あるため、そこへの追記か別メモかも論点)。
関連
laarma_sdk/src/laarma/context_accumulator.pyの_compute_confidence()/derived_signals()if implemented)